子育ては、手間暇がかかるものです。
子どもは生まれたら自然に大きくなります。けれど、人として育つという意味では、放っておいて育つほど単純ではありません。
親が関わり、支え、導きながら、少しずつ社会の中で生きていく力を身につけていきます。
その過程には、やはりそれなりの手間と時間が必要です。
ただしここで一つ、誤解されやすいことがあります。
「手間暇」をかければかけるほど、子どもがよく育つわけではない、ということです。
子育てには「手間暇」が必要ですが、同時に「手間暇のかけどころ」があります。
ここを間違えると、思わぬ方向に進んでしまうことがあります。
たとえば、子どもが困らないように先回りしてしまう。
失敗しないように細かく指示を出してしまう。
心配だからと、いつも親が判断してしまう。
こうした関わりは、一見とても熱心な子育てのように見えます。
実際、子どもを思う気持ちから出ている行動でしょう。
けれども、それが続くと、子どもは自分で考えたり決めたりする機会を失ってしまいます。
つまり、手間をかけているつもりが、子どもの自立を遅らせてしまうこともあるのです。
反対に、手間暇を惜しまず関わりながらも、子ども自身が考え、選び、経験する余地を大切にする家庭では、子どもは比較的早い段階から自立的に育っていきます。
親がすべてを整えてあげたからではありません。
むしろ、子どもが自分で動けるように、「環境」を整えているだけです。
子どもは本来、成長したがる存在です。
できるようになりたい。
役に立ちたい。
認められたい。
そういう気持ちを、誰もが持っています。
その力が動き出すために必要なのは、親がすべてをコントロールすることではありません。
安心して挑戦できる「環境」です。
理解されている。
尊重されている。
信頼されている。
そう感じられる人的な環境、つまり安心できる親子関係の中で、子どもは自分の潜在的な力を使い始めます。
だから子育てで本当に大切なのは、手間をかけることそのものではなく「どこに手間暇をかけるか」なのです。
子どもを動かすことに手間をかけるのか。
それとも、親子の関係を整えることに手間をかけるのか。
この違いは、長い目で見るととても大きな差になります。
子育ては、確かに簡単ではありません。
手間も時間もかかります。
けれど、その手間が自立を育てる方向に向いているなら、子どもはやがて自分の足で立ち始めます。
親が一生支え続けなければならない子ではなく、自分で考え、自分で問題を解決していく人へと育っていきます。
子育てに必要なのは、手間暇を惜しまないこと。
そして
その手間暇の「かけどころ」を間違えないこと。
そこに気づいたとき、子育ては少しずつシンプルにラクになっていきます。